夏山計画を断念し、失意の中にいた私。代わりに八ヶ岳に向かう計画を立てたのですが……。
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新たな計画
失意の中で
塩見岳への山行計画を断念し、週末は家で過ごすことになった私。
部屋の片隅には、既にパンパンになったザック。
片づける気にもなりません。
翌週も置き去りにされたままのザックを見かねた妻が一言、
「他のところに行ってきたら?」
確かに。
3,000m峰というものに意識が行き過ぎていましたが、とりあえず「新たに購入した装備を試すくらいしたい」、あと「夏山らしい写真を撮りたい」と思った私は、妻の言葉に甘えて週末1泊2日で別の候補地を探すことにしました。
八ヶ岳へ
選択したのは、八ヶ岳。
その中で、赤岳・硫黄岳の縦走コースです。
先の反省を生かし、土日を利用させてもらいます。
もちろん車でのアクセスの方が早くスタートはできますが、このコースであれば公共交通機関でのアクセスも容易です。
この再挑戦を決断したのが金曜日だったため、急いで特急券を予約しました。
無念の撤退
計画
本来の計画は以下のとおりでした。
1日目は新宿発の特急あずさで茅野へ。
茅野からアルピコバスで美濃戸口へ。
美濃戸口からはコースタイム3時間半で幕営地の行者小屋。
余裕があれば阿弥陀岳をピストン。
2日目は早朝に出発し、赤岳・横岳・硫黄岳と縦走し、行者小屋に帰着後テントを撤収、下山。
往路と同様の手段で帰宅。
正直、難易度はそんなに高くないですし、楽勝だと思っていました。
新テントのデビュー戦としてはピッタリではないかと。
ただ、甘かったです。
慌てて出発した結果
当日の朝。
余裕をもって起床したつもりが、出発がギリギリに。
走るようにして、最寄りの駅に向かうことになりました。
新宿へ向かう電車の中で、帽子を忘れてきたことに気がつきます。日差しが強くなる可能性がある中でやや不安が……。
その後、ホームでおにぎりを購入し、無事あずさに乗車。
土曜ということもあり、車内は登山者で混み合っていました。色々準備をしていた結果4時間ほどしか寝れていなかったのでここで睡眠をとります。
そして、茅野駅まであと少しというところで目を覚ましたましたが、足に違和感が。
これは……
インソールが入っていない!?
そう、乾燥させていたインソールが玄関に置いてあったにも関わらず、シューズに入れるのを忘れてきたのでした。
しかも、自宅からずっと履いているのに、このタイミングで気がつくなんて……。
自分の不注意を呪いましたが、今更引き返すわけにもいきません。
いざとなったら靴下を二重にすることにして、とりあえず歩いてみることにします。
茅野駅には8:57到着。
バスの切符売り場もバス乗り場も大行列でした。
美濃戸口行きのバスは9:25発なので、切符を購入したあと日差しの中でしばらく並びます。
乗り場は4番乗り場。
バスはぎゅうぎゅうで、ギリギリ座れました。次の特急でもバスには間に合いましたが、次ので来た人は座れていませんでした。
出発
40分ほどで美濃戸口に到着。
茅野駅は暑かったですが、ここはもうかなり涼しくて爽やか。
久しぶりの夏山にテンションがあがりつつ、出発します。
ちなみに、歩いて1時間ほどの赤岳山荘までマイカーは入ることができます(未舗装ですが)。
私が到着した時点で美濃戸口の駐車場も、赤岳山荘の駐車場も相当数の車が停まっていました。
これが今回恐れていた点で、八ヶ岳を訪れる人は本当に多いという認識があるので、テン場の空き状況が不安でした。
色々調べた限り張れなかったというレポートはありませんでしたが、初のソロテントなのでなるべくスペースに余裕があるうちに行者小屋に到着したいと考えていました。
快調に進み、ほぼコースタイムどおりで赤岳山荘、美濃戸山荘に到着。
異変
そこから本格的な登山道に入っていきます。
やっと待ちに待った夏山。
しかし、先ほどまでは順調だったペースが、登山道に入った途端にガクッと落ちてしまいます。
内側も革張りの私のシューズにとって、やはりインソールがないのは大きく、斜面に足を踏み出すたびに足の裏に痛みを感じるようになり、それが段々と大きくなっていきます。
背負ったザックは恐らく17~18kg前後というところで、学生時代は20kg以上背負って縦走をしていた身からするとそんなに重いと思っていませんでしたが、ここにきて重くのしかかってきました。
肩や腰に痛みを感じ、足が上げるのが辛く感じるように。
思ったより日差しはなく、涼しいはずなのにいつの間にか大量の汗が。
水を飲んでも飲んでも、喉が渇きます。
「早くテン場に着かなければ」と焦る気持ちに反して、ペースは一向に上がりません。
段々と休憩の間隔が短くなっていき、ついには一歩も進めなくなってしまいました。
逡巡そして、決断
沢沿いの岩に腰かけた私。
頭の中には様々な考えが駆け巡ります。
正直これ以上登るのはしんどい。
でも、時間さえかければ行者小屋まで行けなくない気がする。
ただ、たどり着いたところで明日の縦走は無理ではないか。
この時間でテン場は空いているだろうか。
最大の目的はテントを試すことなのだから、明日上に行けなくてもいいのかな。
その岩にどのくらい腰かけていたかわかりませんが、私は下山を決断しました。
反省点と今後に向けて
今回の反省点
ゆっくりと下山し、美濃戸口から最終のバスに乗り、あずさの特急券を変更した私。
(特急券は満席だったけど、ギリギリでキャンセルが出た)
車内では、自らの不甲斐なさに対して、深い絶望に襲われました。
今回の反省点は次の2点です。
まずは、準備と認識不足。
自分の体力の衰えや運動不足を認識せず、能力を過信していたのと、事前準備をしっかりと積み重ねず衝動的に行動してしまったこと。
そして、精神力。
当初の計画を断念したことに関しても、今回の撤退に関しても、ソロじゃなかったら途中で止めることはなかったかもしれません。
ソロだからこそ、言い訳をつくって止めてしまった気もします。
(ただ、決行していたらもっと大変なことになっていた可能性もありますが……)
今後に向けて
今回の経験を経て、少なくとも今年中は大きな山行には行かないことにしました。
これは予算的な問題もありますし、状況を見つめ直そうと思います。
これまで「3,000m峰制覇」という目標と、「ここには登ったことがある」「コースタイムより早く登れるはずだ」「〇〇kgくらい背負えるだろう」などと過去の実績にとらわれ過ぎていたように思いますので、しっかり体力づくりと、準備をして、また一から登山というものを始めていきたいと思います。